2016/07/15
近視の原因は遺伝によるものだった?
目次
ゲームのやり過ぎ、暗いところの読書で近視になるのか?
近視の原因は遺伝によるものと環境によるものが複雑に絡んで起こると考えられています。
パソコン、テレビ、スマートフォン、勉強、読書と目を使う作業を長く続けることで、目が疲れてしまうために水晶体の調整機能がうまく行かないことで、近視になりうることが考えられています。
ネパールで、地方の学校と都会の学校で近視の頻度を比較したところ、近くを見ることの多い都会の学校の子どもに、近視が明らかに多いという報告もされています。
出典:http://www.gankaikai.or.jp/
今世紀になって初めて大規模な調査が行われた結果、学童期の近視の進行は、(1)遺伝の影響が最も強く、(2)都市部で早く、(3)I.Q.や学歴が高いほど早く、(4)近業の程度が強いほど早く、(5)太陽光の下での戸外活動によって抑制されることが明らかになりました。
出典:http://www.fujimotoganka.com/
勉強や読書のほか、日本だと小さな子供でも携帯ゲーム機やスマートフォンを扱うことが多いため、近視になりやすい要素が溢れていると言ってもおかしくありません。
こうした環境でも一定の割合で近視にならない人もいるため、環境による影響についてはっきりとは証明されてはいませんが、原因の一つとして考えられるものとなります。
京都大学の研究から見えた遺伝子の変異について
2015年4月に京都大学大学院医学研究科の研究により、近視の発症について遺伝子の変異によるものと発表されました。
この研究は滋賀県長浜市と京都大学医学研究科が連携して実施する「市民健康づくりの推進」と「医学の発展への貢献」を掲げた事業でによりもたらされ、9,800人の市民からの遺伝子データを解析したことによってWNT7B遺伝子の変異(SNP)が近視の発症に影響を与えていることを突き止めました。
近視の発症に関係するWNT7B遺伝子
さらに1,000人の日本人強度近視患者の追加データを解析したところ、WNT7B遺伝子の変異が強度近視の発症に影響を与えていることも明らかになり、マウスを使った動物実験において角膜と網膜の細胞が出すWNT7Bタンパク質の量が、近視が発症した際に変化するということが明らかになりました。
人間の遺伝子染色体は性染色体を含め23種類あり、WNT7B遺伝子は22番染色体と呼ばれる常染色体にあります。
このWNT7B遺伝子により作られるタンパク質が、どのように近視に影響するのか詳細については未だ明らかになっておりません。
今後の研究により新薬開発などの期待も
現在近視の矯正には眼鏡・コンタクトレンズが用いられていますが、今後の研究によってWNT7Bタンパク質と近視の関連性やメカニズムが明らかになれば、近視の治療薬が開発されるかもしれません。
近視はアジア人に多く、日本人の2~3人に1人は近視であると言われています。
更に近視の中でも特にその度合の強い強度近視の場合ですと、網膜や脈絡膜が後ろに引き伸ばされることによって負担が増し、最悪の場合失明に至ります。
こうした強度近視による失明は、緑内障や糖尿病網膜症などの病気とともに日本人の失明原因として多いものになります。
今後の研究によって、強度近視による失明を予防できるよう期待したいところです。
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